「クラブ意識が高い選手が、体意識が高くなりすぎると調子を崩す」と聞いたことがありますか。
ジュニアから天才といわれるような方が、プロになり急に調子を崩されたりするケースがあるといいます。このテーマに関連する科学的な検証はいくつかの観点から考察できますが、ゴルフ限定で直接的にこの現象を立証する研究はまだ限られています。ただし、スポーツ心理学や運動科学の分野で行われた研究から、関連する知見を導き出すことが可能です。ゴルフにおいて、クラブに対する意識を持つことは非常に重要ですが、SNSで流れている動画は動きの話ばかり。時として体の動きに対する意識が過度になると、かえって調子を崩すことがあるといいます。クラブの動きを正確にコントロールするためには、自然な体の動きが不可欠です。しかし、体の動きに過度に集中しすぎると、スイングが硬直し、自然なリズムやタイミングを失うリスクがあります。
特に、クラブ意識が高い選手は、技術的な細部に注意を払う傾向がありますが、その一方で体の動きを意識しすぎると、本来のスムーズなスイングを損なうことがあります。これにより、思い通りのショットが打てなくなり、結果としてスランプに陥ることも考えられます。クラブと体のバランスを保つことが、安定したパフォーマンスを維持するために重要であり、適度なリラックスが必要です。
このテーマは、ゴルファーがクラブと体の動きのバランスをどのように取るべきか、そしてそのバランスがパフォーマンスに与える影響について考えるきっかけとなるでしょう。
1. 動作の自動化と注意の分散
運動学習において、熟練した動作は自動化される傾向があります。これにより、選手は動作そのものを意識せずに自然に行うことができます。しかし、体の動きに過度に意識を集中すると、この自動化されたプロセスが妨げられ、結果としてスムーズな動きが損なわれる可能性があります。研究では、熟練者がパフォーマンスにおいて、動作の詳細な部分に意識を向けると、パフォーマンスが低下することが示されています 。
2. 焦点の切り替えとパフォーマンス
スポーツ心理学の分野では、プレイヤーが「内的焦点(体の動きに対する意識)」から「外的焦点(クラブやボールの動きに対する意識)」に焦点を切り替えることで、パフォーマンスが向上することが示されています。内的焦点に偏りすぎると、動作が不自然になり、結果としてスイングのタイミングやバランスが崩れるリスクがあります 。
3. 緊張とパフォーマンスの関係
また、緊張がパフォーマンスに与える影響についても広く研究されています。過度な意識や緊張は筋肉の硬直を引き起こし、自然な動きを阻害することが知られています。ゴルフのスイングにおいても、体の動きに対する過度な意識がこのような硬直を引き起こし、結果としてパフォーマンスの低下を招く可能性があります 。
クラブ意識を高める
まとめ
これらの研究から、クラブの動きに意識を集中させることが重要である一方で、体の動きに過度に意識を向けすぎると、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。科学的な視点からも、クラブと体のバランスを保ちながら自然なスイングを維持することが、スランプを防ぐために重要であると言えるでしょう。
引用:Lowen, J. (2011). The effect of shifting between internal and external foci of attention on throwing accuracy. The Plymouth Student Scientist, 4, 83-103.
Ishihara, T., Kobayashi, T., Kuroda, Y., & Mizuno, M. (2018). Relationship between attention shifting and tennis performance during singles matches.. The Journal of sports medicine and physical fitness, 58 12, 1883-1888 . https://doi.org/10.23736/S0022-4707.18.08161-6.
Baltzell, A., & Summers, J. (2017). The Power of Concentration (Module 3). , 77-86. https://doi.org/10.1007/978-3-319-70410-4_9.