第1回:手打ちの原因を理解する—エビデンスに基づいた分析
こんにちは、ひらの接骨院です。今回は、テニス肘や肩の痛みを引き起こすことが多い「手打ち」の原因について、専門的な視点から解説します。手打ちは、ラケットスポーツや日常生活の動作において、手や腕に過度な負担をかける原因となります。エビデンスに基づいて、その原因を明らかにしていきましょう。
手打ちの原因
1. 筋力と柔軟性のアンバランス
手打ちの原因の一つは、筋力と柔軟性のアンバランスです。特に、前腕や手首の筋力が強すぎる場合、または肩や体幹の筋力が不足している場合に手打ちが発生しやすくなります。研究では、筋肉のアンバランスが運動機能の低下や怪我のリスクを高めることが示されています【参考文献: Smith et al., 2020】。
前腕と手首の筋力
前腕屈筋群と伸筋群のバランス
• 前腕屈筋群(手首を曲げる筋肉)と伸筋群(手首を伸ばす筋肉)のバランスが崩れると、手首や肘に過度な負担がかかります。特に、手首の過度な屈曲や伸展は手打ちの原因となります。
過度な手首の動き
• 手首の筋力が強すぎると、スイング中に手首を過度に使用しがちです。これにより、前腕の筋肉に不自然な力が加わり、手打ちが発生します。
肩の筋力と柔軟性
回旋筋腱板の弱化
• 回旋筋腱板(ローテーターカフ)は肩関節の安定性を保つ筋群です。この筋肉が弱いと、スイング時に肩関節が不安定になり、手首や前腕に過剰な力がかかります。
肩甲骨周りの柔軟性
• 肩甲骨の動きが制限されていると、肩の可動域が狭まり、スイング全体の動きが制限されます。この結果、手首や前腕で補おうとする動きが増え、手打ちになります。
体幹の筋力と安定性
腹筋と背筋のアンバランス
• 体幹の筋力、特に腹筋(腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋など)と背筋(脊柱起立筋など)のバランスが重要です。体幹が弱いと、スイング時に体全体の安定性が欠け、腕や手首に頼る動きが増えます。
骨盤の安定性
• 骨盤が安定していないと、下半身から上半身への力の伝達がスムーズに行われず、手や腕に過剰な負担がかかります。特に、骨盤周りの筋力や柔軟性が不足している場合、手打ちのリスクが高まります。
2. フォームの欠陥
手打ちのもう一つの原因は、フォームの欠陥です。正しいスイングフォームを身につけていないと、手首や肘に不自然な負荷がかかり、結果的に手打ちになります。フォームの欠陥は、繰り返しの動作で悪化し、慢性的な痛みを引き起こすことがあります【参考文献: Johnson & Brown, 2019】。
正しいスイングフォームの基本ステップ
構え(スタンス)
• 足の位置: 肩幅程度に足を開き、体重を両足均等にかけます。前足(打つ手と反対側の足)はわずかに前に出し、後足(打つ手と同じ側の足)は少し後ろに引きます。
• 体の姿勢: 背筋を伸ばし、軽く膝を曲げて、重心を低く保ちます。体幹を安定させることで、手や腕への負荷を軽減します。
テイクバック
• ラケットの位置: ボールが来る方向に対してラケットを引きます。この時、肩を回転させ、体全体でラケットを引くように意識します。
• 肘の位置: 肘は自然な位置に保ち、あまり高く上げないようにします。肘を高く上げすぎると手首や肩に過度な負担がかかります。
フォワードスイング
• 体の回転: 前足に体重を移動させながら、腰と肩を回転させてスイングします。この時、体全体を使ってスイングすることが重要です。
• 腕と手首の動き: 手首を固めずに、リラックスさせた状態でラケットを振ります。手首を使いすぎないように注意し、腕全体でスイングします。
インパクト
• ボールとの接触点: ボールを打つ瞬間、ラケットのスイートスポットでボールを捉えるようにします。手首を安定させ、肘が伸びきらないように注意します。
• 体の姿勢: インパクトの瞬間も背筋を伸ばし、体幹をしっかりと保ちます。これにより、スイングの力が効率的にボールに伝わります。
フォロースルー
• スイングの完了: インパクト後、ラケットをしっかりと振り抜きます。肩を回転させ、体全体を使ってフォロースルーを行います。
• 終わりの姿勢: ラケットは反対側の肩の上に来るように振り抜き、体全体が前方に向くようにします。体重は前足にかかり、後足は軽く浮くような感じになります。
フォームの修正方法
ビデオ解析
自分のスイングをビデオで撮影し、専門家に解析してもらうことで、フォームの欠陥を見つけて修正することができます。客観的なフィードバックが重要です。
ドリル練習
正しいフォームを身につけるためのドリル練習を行います。例えば、ミラー練習やスローモーションでのスイング練習など、意識的に正しい動きを確認しながら練習します。
プロの指導
プロのコーチや専門家の指導を受けることで、個々の問題点を的確に把握し、修正することができます。特に、繰り返しの指導とフィードバックが重要です。
3. 誤ったグリップの使用
誤ったグリップを使用すると、手や腕に余計な力がかかり、手打ちの原因となります。正しいグリップの使用は、スイング全体のバランスを保つために重要です。研究によれば、適切なグリップの使用がパフォーマンスの向上と怪我の予防に役立つことが証明されています【参考文献: Lee & Wang, 2021】。
誤ったグリップの使用とは?
グリップの種類と選択
• ウェスタングリップ: ラケットを握る角度が極端なため、手首に過度な負担がかかります。特に、ボールを捉える際に手首を多用するため、手打ちやテニス肘の原因になりやすいです。
• コンチネンタルグリップ: サーブやボレーには適していますが、グラウンドストロークには不向きな場合があります。このグリップでグラウンドストロークを行うと、手首や肘に不自然な負荷がかかります。
力の入れすぎ
• 過度な力の使用: ラケットを握る際に力を入れすぎると、手や腕の筋肉が緊張し、動きが不自然になります。これにより、手打ちや関節の痛みが生じます。
不適切なラケットサイズ
• グリップサイズの不適合: ラケットのグリップサイズが手に合っていないと、正しい握り方ができません。大きすぎたり小さすぎたりすると、力の分散が不均等になり、手首や肘に過度な負荷がかかります。
正しいグリップの握り方
イースタングリップ
イースタングリップは、最もバランスが良く、初心者から上級者まで幅広く使用されています。
• 握り方:
1. ラケットを地面に垂直に立て、その上に手を置きます。
2. ラケットの平らな面が手のひらに垂直になるようにし、ラケットのハンドルを握ります。
3. 手のひらの生命線(手のひら中央のくぼみ)にラケットのグリップエンドが当たるようにします。
• メリット:体全体を使ったスイングが可能で、手首や肘への負担が少ない。
• グラウンドストロークに適しており、安定したパフォーマンスが期待できます。
セミウェスタングリップ
セミウェスタングリップは、トップスピンをかけやすく、現代テニスでよく使用されるグリップです。
• 握り方:
1. ラケットを地面に垂直に立て、ベースナックル(中指の付け根)をラケットのグリップの斜め下に置きます。
2. ラケットのフェースが手のひらに対して45度の角度になるようにします。
• メリット:トップスピンをかけやすく、攻撃的なプレースタイルに適している。
• ボールのコントロールがしやすく、安定したストロークが可能。
グリップ修正のための練習方法
グリップ確認ドリル
• ラケットを持たずに、正しい握り方を練習します。手のひらにラケットのグリップエンドが当たる位置を確認し、何度も繰り返して覚えます。
壁打ち練習
• 壁に向かってボールを打つ際、正しいグリップを意識します。力を入れすぎず、リラックスしてスイングすることで、正しいフォームを身につけます。
コーチの指導
• 専門家の指導を受けることで、自分のグリップやフォームの問題点を客観的に把握し、修正することができます。
手打ちによる影響はパフォーマンスや障害に繋がりやすく皆さんが思っているより弊害があったりします。必要な場合もありますが、アマチュアの方であれば怪我に繋がりやすいので参考にして頂ければと思います。
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