骨折の合併症(柔道整復を学ぶ・シリーズブログvol.006)

骨折の合併症――注意すべき二次的なリスク

骨折は、適切な治療と管理によって多くの場合は回復しますが、場合によっては「合併症」を引き起こすことがあります。これらの合併症は骨折自体の治療を複雑にし、患者の生活の質(QOL)に影響を与える可能性があります。今回は、骨折による主な合併症とその予防法について解説します。


骨折の主な合併症

1. 癒合不全(ゆごうふぜん)

  • 骨折部位が正常に癒合せず、骨がつながらない状態。
  • 骨への血流が不足したり、不適切な固定が原因となることがあります。
  • 治療法: 手術による骨移植や金属プレートでの固定など。

2. 変形治癒

  • 骨折部位が異常な角度で癒合する状態。
  • 特に放置された骨折や適切でない整復が原因となります。
  • 治療法: 再手術での矯正や骨切り術。

3. 関節拘縮(こうしゅく)

  • 骨折周囲の関節が硬くなり、可動域が制限される状態。
  • 長期間の固定や運動不足が主な原因です。
  • 治療法: リハビリテーションや温熱療法。

4. 感染症

  • 特に開放骨折の場合、骨折部位に細菌が侵入し感染症を引き起こす可能性があります。
  • 治療法: 抗生物質の投与や感染部位の外科的除去。

5. 神経や血管の損傷

  • 骨折した骨が神経や血管を傷つけることがあります。
  • 特に上腕骨や大腿骨骨折では注意が必要です。
  • 治療法: 専門的な外科的処置。

6. 血栓症(深部静脈血栓症)

  • 骨折後の安静期間中、血流が滞ることで血栓が形成されるリスクが高まります。
  • 特に大腿骨骨折や骨盤骨折で発生しやすいです。
  • 治療法: 抗凝固薬の投与や適度な運動。

特に注意が必要な合併症

コンパートメント症候群

  • 骨折後、筋膜の中で内出血や腫れが生じ、周囲の血管や神経が圧迫される状態。
  • 痛みが激しく、早期の外科的処置(筋膜切開)が必要となります。

脂肪塞栓症候群

  • 大腿骨や骨盤骨折後、骨髄内の脂肪が血流に乗り、肺や脳で塞栓を引き起こすことがあります。
  • 呼吸困難や意識障害が見られることが特徴です。

合併症の予防方法

  1. 早期診断と治療

    • 骨折が疑われた場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
  2. 適切な固定

    • 医師による正確な整復と固定が、癒合不全や変形治癒を防ぎます。
  3. リハビリテーション

    • 固定が解除された後、適切なリハビリを行い、関節の可動域を確保します。
  4. 感染予防

    • 開放骨折の場合は消毒と抗生物質の投与を徹底し、感染リスクを最小限に抑えます。
  5. 血栓予防

    • 長期間の安静を避け、医師の指導の下での軽い運動を取り入れます。

まとめ
骨折は、その治療過程において多くの合併症を引き起こす可能性があります。しかし、早期の適切な治療や予防策を講じることで、それらのリスクを大幅に軽減することが可能です。患者さん一人ひとりの状況に合わせた治療計画を立てることが、合併症を防ぎ、治癒を促進する鍵となります。

次回は、小児骨折・高齢者骨折の特徴についてお届けします。年齢によって異なる骨折の特徴や治療のポイントを掘り下げて解説しますので、ぜひご期待ください!

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