ゴルフスイング代償動作から得られる予防のヒント vol.229

ゴルフスイングにおいて、柔軟性の欠如によりスイングが自然と変わってしまう現象があります。アマチュアゴルファーの多くはこの柔軟性の欠如により理想のスイングに近づけないケースがほとんどではないかと思います。

スイングに必要な動的柔軟性は確保できているとしても、例えば繰り返しの練習により各所に疲労が重なった場合、知らず知らずに柔軟性が欠如することがあります。この影響が、身体の自己防衛のために動きを変える主に「代償動作」として知られています。

具体的には、身体が特定の関節や筋肉の制限を補うために、他の部位を過度に使用したり、不自然な動きを取り入れることを指します。この現象は「コンペンセーション」とも呼ばれますが、理想のスイングが上手くいかない時、プロとアマチュアでは少し事情が違うところがありますが、ただし出てくる言葉は同じなんです。

「最近調子悪い…」。

さて専門用語では、この現象は以下のように表現されることがありますが、スイングを指導されるコーチにより言葉は違うかもしれません。

・コンペンセーション(Compensation)

身体の一部に制限がある場合、その制限を補うために他の部分が過剰に動く現象。

・代償動作(Compensatory Movements)

身体の特定の部分が正しく機能しない場合に、他の部分がその役割を代わりに果たす動き。

・防御反応(Protective Mechanism)

身体が損傷を避けるために自然に行う防御的な動きや姿勢の変化。

このような代償動作や防御反応は、特にゴルフスイングのような複雑な動作において重要な役割を果たします。これらの反応を理解し、適切に対処することで、パフォーマンスの向上や怪我の予防が可能になります。

関節痛との関わり

繰り返し動作はゴルフスイングに限ったことではありませんが、こうした延長線上に手首や肘、膝の痛みなど伴うことが多いもので、当院に訪れるゴルファーの80%は、痛いと感じている箇所と、実際に改善が必要な部位が異なるケースです。その為に初診で来院される患者様には、スイング動画を持参いただいております。

許容範囲はある

ゴルフスイングにおける代償動作の許容範囲について考える際には、以下の点を考慮することが重要です。

1. パフォーマンスへの影響

代償動作がスイングの効率やパフォーマンスにどのように影響するかを評価します。もし代償動作がスイングの安定性や正確性を損なわず、むしろパフォーマンスを向上させるのであれば、ある程度の代償動作は許容されるかもしれません。

2. 怪我のリスク

代償動作が特定の関節や筋肉に過剰な負担をかける場合、長期的には怪我のリスクを増加させる可能性があります。このような場合、代償動作を修正することが推奨されます。ただし痛みも出ていないところで、未来の可能性を受け入れるゴルファーはそう多くありません。

3. 個々の選手の体力と柔軟性

選手の体力や柔軟性、身体の特徴に応じて、代償動作がどれほど許容されるかは異なります。例えば、柔軟性の高い選手は特定の代償動作に耐えやすいかもしれませんが、体力が低い選手には不適切といえます。具体的に言えば、柔軟性の高い選手に、専門的な立場の意見があったとしても、「怪我のリスク」で述べたように、受け入れ難いケースがほとんどです。体のダメージを感じていない状態では致し方ない。

4. スイングの一貫性

代償動作が一貫したスイングを妨げる場合、それは問題となるでしょう。一貫性のないスイングはパフォーマンスの変動を引き起こし、競技成績にも悪影響を及ぼします。例えばプレッシャーのかかるホールで、またはプレッシャーのかかるショットに限り、そうした代償動作の影響が出てしまうこともあるはずです。

5. 専門家の評価

スイングの代償動作を評価するには、ゴルフコーチやスポーツ医学の専門家の意見を求めることが重要です。選手の動作解析を通じて、どの動作が問題であり、どの範囲で許容できるかを判断するのに役立ちます。そのためにも、ツアー帯同コーチの存在があるのだとみております。

具体的な対策

  1. スイング解析: 動作解析ツールを使用して、スイング中の代償動作を特定します。
  2. フィジカルトレーニング: 代償動作を引き起こす筋力や柔軟性の不足を補うためのトレーニングを行います。
  3. スイング修正: スイングコーチの指導のもと、代償動作を修正するための技術的な調整を行います。
  4. 定期的なチェック: 定期的にスイングを評価し、代償動作が再発していないか確認します。

代償動作がゴルフスイングに与える影響は選手によって異なるため、個々の状況に応じた評価と対応が重要です。日頃からメンテナンスやセルフケア、または、ゴルフであればスイング指導されるコーチに定期的に見ていただくことが大切かと思います。