プロの価値を決めるのは何か?〜合格者数の基準に見る人間心理〜vol.451

 
LPGAプロテストの合格者数が20人。これが多いか少ないか、という問いは見る角度によって答えが異なりますが、多くの人が「少なすぎる」と感じているのは事実です。私もその一人であり、プロゴルファーという厳しい世界において、20人という数字が非常に狭き門だと感じています。しかし、協会はその人数を増やす方針を示していません。この状況を俯瞰してみると、ふと「では3人だったらどうだろう?」という問いが浮かびます。果たして私たちは、それでも「少ない」と嘆くのでしょうか?それとも、かえって増員を求める声が高まるのでしょうか?

ここで考えたいのは、人間がどのように「価値の基準」を見定めるかという心理的な側面です。なぜ20人が少なく、3人では極端と感じるのか、そしてその「基準」にどう向き合っているのかを、心理学的観点と社会的な視点から掘り下げてみたいと思います。

1. 「希少性」と「価値」の錯覚

人間の心理には、「希少なものは価値が高い」というバイアスがあります。この心理は経済学でも言及されており、宝石や希少な商品に高い価値が置かれる理由の一つです。この考え方に基づくと、LPGAプロテストにおいても合格者が少なければ少ないほど、その合格者に特別な価値が生まれます。20人という「少ない」と感じる人数は、プロの価値を高める要素の一つと言えるでしょう。

しかし、20人という基準が「厳しすぎる」と見なされるのも同時に事実です。ここには、一定数の人がプロを目指すべきだという暗黙の「基準」が働いているのかもしれません。この20人を「少なすぎる」と感じるのは、競技人口に対してその数が公平ではないという意識が関わっているのです。

2. 「基準」を崩した時の心理的反応

ここで想像してみてください。合格者が20人ではなく、極端に少ない3人であった場合、多くの人が「少なすぎる」とさらに強く感じるでしょう。その結果、20人という基準が「まだ妥当だ」と思われるようになり、「増員」を求める声がむしろ強くなる可能性があります。この心理的反応は、社会心理学における「認知的不協和」の概念とも関わります。人は、ある基準が極端すぎると感じると、その不協和を解消しようとするために「正常な基準」への修正を求めます。つまり、私たちが合格者数20人に「少ない」と感じる心理も、さらに減らされることで逆にその基準が見直され、増員の必要性が強く認識されるのです。

3. 社会的基準とプロとしての価値

こうした心理現象は、スポーツ界のみならず多くの分野で見られます。例えば、高学歴社会における入試競争や、企業の採用枠といった事例も似ています。一定の基準が厳しいほど、そこで「選ばれた」人々の価値は高く見積もられます。しかし、その基準が厳しすぎると、結果的に「選ばれること」自体が難しくなり、逆にその基準が見直されることもあります。LPGAにおける20人という基準は、プロとしての価値を担保しつつも、若手選手が挑戦できる機会を十分に提供しているのかという問いが浮かび上がります。

4. 「価値」を見定めることの難しさ

私たちが目の当たりにしているように、ある基準に対しての満足感や価値の認識は非常に曖昧です。20人が「少なすぎる」と感じるか、あるいは「十分である」と感じるかは、個々の競技者や関係者の価値観や期待によって変動します。こうした価値の揺らぎに対し、私たちがどのように共通の基準を持つかは難しい課題です。

では、どうすればこうした基準に対する人間の複雑な心理をうまく活かし、競技にとって最良の制度を作り上げることができるのでしょうか?一つの答えとして、基準を絶対的なものとせず、柔軟に見直し、変動させることで多くの人が納得できるシステムを作るという考え方があります。つまり、「価値」とは固定された基準ではなく、時代や状況によって変わり得るものと捉えるべきなのです。

結論:基準の「柔軟性」を重視した価値づくり

LPGAプロテストの合格者数が20人であることに対する「少ない」という意見は、選手の夢と競技者としての希望が詰まった声でもあります。そして、この基準がさらに少なくなった場合に、私たちはどう感じるか、その基準を再度見直すべきかという問いが浮かび上がります。この問いの答えを導くには、絶対的な基準に縛られるのではなく、柔軟に対応しながら価値を再評価する姿勢が求められるでしょう。

現行の20人は少ない—競技と業界の持続性のために

私自身、プロテスト合格者20人という枠が狭すぎると感じる一人です。しかし、現行のルールでツアーへの予選会・QTエントリーが「合格者に限定」されているのであれば、最低でも50人は合格させ、その時代の実力者が互いに切磋琢磨できる場を増やすことが必要ではないでしょうか。競技レベルが維持され、トップツアーの魅力もさらに増すと考えられます。

この考え方には、私自身の経験も重なっています。私は国家資格を有する柔道整復師ですが、資格を得ただけで生計を立てることは容易ではありません。民間の整体師とは異なる資格の価値を持つものの、それだけでは生き抜くことが難しい現実を痛感しています。このように、資格を得ること自体には意味がありますが、それに頼り切る時代は既に過去のもので、各業種においても「資格取得のみで食べていける」という時代は終わりを迎えていると感じています。

資格や合格の先にある「挑戦」の場が必要

LPGAプロテストでも同様に、単なる資格や希少性だけでなく、その合格の先にある「挑戦」や「実力の競い合い」を確保することが、競技の未来にとっても重要です。今後、合格者数の拡大と競争の場の充実が実現することで、プロとしての「価値」を維持しながらも、多くの人材が活躍できる環境が整っていくことを期待しています。

#プロテスト合格者は3人にしよう運動

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