ゴルフデータ分析と感覚喪失vol.152

イップスは治る/著:飯島智則

イップスは、これまで医学的根拠が整わないために、これをすれば必ず治るということが言えないところがあり、試行錯誤を繰り返している分野です。

イップスは、スポーツ選手が突然、特定の技術動作を正常に実行できなくなる現象で、特にゴルフや野球のピッチングなどの精密な運動技術を要するスポーツで報告されています。

周囲にも、ゴルフ・野球のイップスで悩む選手はいました。専門知識に貧しい私が何ができるわけではありませんが、悩んでいる選手が、「私悩んでいるんです」と話ができる環境を作れたことがきっかけでした。私がしたことは話を聞いてあげただけで、直接の解決法ではありませんが、話の先にコーチを探すことにつながり、出会ったコーチの指導により結果的には克服しました。

選手のミスの症状は一貫していました。

当時「右に向かって球が飛んでいるのは、自分がそのように打っているからであり、球が意識をもって勝手に飛ぶわけではないよね」とストレートな言葉を伝えました。そのように体がうごいている結果を信じられないだけであり、「どう動くとこうなる(ミスの球)」という分析や知識も身に付いていないのでは?」というところから、コーチ探しを始めたのです。特にスイング知識を持たなくても感覚で振って、成績を上げてきたプロにはあるのかもしれません。

イップスは心理的な要因が大きく関与しているとされ、過剰なプレッシャー、不安、恐怖が主な原因の一つと考えられています。

ちょっとした教え魔の助言から動きに制限がかかったとか、過剰な練習や、ゲーム中のパッティングからイップスになったという話も聞いたことがあります。先ずはリラックスできる環境を与えるとも聞きますが、そうした理由以外に、ここ数年進化してきた画像によるデータ分析が、ゴルフにおける運動感覚の喪失やイップスに関係しているのではないか⁈と、想像の域ではありますが、過剰なデータ分析に依存するケースと、データ分析をしないコーチに依存するケースは、何も外的要因(コーチから生徒さんを見た際の動き)をコーチ指導に頼るか、データーに頼るか、何かに頼りすぎると自身の感覚を失う要因になりかねないのでは⁉︎という仮説に基づいています。

過剰なデータ分析と運動感覚の喪失

過剰なデータ分析は、選手が自身の感覚や直感よりも数字や分析結果に依存するようになり、これが運動感覚の喪失につながる可能性があります。ゴルフにおいては、スイングやパッティングなどの技術を磨く上で感覚が非常に重要です。自分の体の動きやクラブとの連動を感じ取ることが、技術の習得や改善において中心的な役割を果たします。過剰なデータ分析により、この「感じる力」が低下すると、自然なスイングやパットが難しくなり、結果としてパフォーマンスが低下する可能性がありそうです。

 過剰なデータ分析とイップス

イップスと過剰なデータ分析との関連については、心理的な側面から考えることができます。イップスは、運動技術の突然の低下だけでなく、それを伴う不安や焦りといった心理的な問題も含まれます。選手がデータ分析に頼りすぎることで、自分の感覚や技術に対する自信を失い、さらには毎回のショットやパットに対して過度に意識しすぎるようになると、プレッシャーが増大するでしょう。このプレッシャーは不安や恐怖を引き起こし、最終的にイップスの発症につながる可能性があります。

対策

バランスの取れた分析

データ分析を行う際は、それに依存しすぎず、自身の感覚や直感も大切にすることが重要です。データはあくまで一つの参考情報として利用し、全体のパフォーマンス向上に役立てることが肝心です。

メンタルトレーニング

自信を維持し、プレッシャーに対処するためのメンタルトレーニングを行うことが、イップス予防に役立ちます。
メンタルトレーニングとは体型的なものばかりでなく、信頼できる人材に相談できることもメンタルヘルスを維持できるでしょう

練習の多様化

練習内容を多様化することで、データ分析に頼りすぎることなく、さまざまな状況に対応できる柔軟性を身につけることができます。過剰なデータ分析はゴルフの運動感覚の喪失やイップスの一因となり得るため、データを適切に利用し、心理的な健康も大切にすることが、良いパフォーマンスを維持する鍵となります。