腸内環境と筋肉増強の関係 vol.171

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かつて私が担当していたある選手で、筋肉量の増加がなかなか見られないケースがありました。トレーニングメニューを数ヶ月ごとに変更しても、数字上の変化は見えず、時には体重が減少することもありました。多くのゴルファーが望むように、怪我をしない体作り、その結果として飛距離も伸ばしたい、そんな思いで取り組んでいたものの、目に見える変化が起きなかったのです。

その選手は定期的に食事を取るものの、内容によってはすぐに満腹感を感じ、腹部の張りが続くことが多かったです。さらに、風邪や発熱が原因で3〜4kgも体重が減少し、元の状態に戻すのが大変でした。この問題に対処するため、当時腸内環境の改善に取り組んでいた内科医に相談しました。医師の指導のもと、腸内フローラ検査や必要な血液検査を行い、約1年間にわたって改善処方を続けました。

このアプローチによって、選手の体調は安定し、体の成長も目に見えて変化しました。栄養と体調の管理が如何に重要かを改めて認識した経験でした。

さて、腸内環境が悪化すると筋肉増強が困難になる可能性があります。この点については、腸内細菌群が健康全般に及ぼす影響を研究する多くの文献があり、特に筋肉の代謝や成長に関連する研究が注目されています。以下にその理由と具体的な研究例を示します。

腸内環境と筋肉増強の関係

腸内環境、特に腸内細菌のバランスが健康に与える影響は広範囲にわたります。健康な腸内フローラは、栄養の吸収効率を高め、免疫系の機能を向上させることが知られています。これらの要素は、直接的には筋肉の回復や成長に影響を及ぼすため、腸内環境が悪化するとこれらのプロセスが妨げられ、結果として筋肉の増加が困難になる可能性があります。

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研究事例

腸内細菌と筋肉量の関係に関する研究

  • Clark and Mach (2016)は、腸内細菌の構成が筋肉の合成に影響を与える可能性があることを指摘しています。特に、腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸は、筋肉のエネルギー源として直接利用される可能性があると述べています。

プロバイオティクスの摂取が筋トレの効果を向上させるかの研究

  • Jäger et al. (2019)による研究では、プロバイオティクスの摂取が筋肉回復を促進し、炎症を減少させる効果があることが示されています。これにより、筋肉成長の効率が向上する可能性があります。

結論

腸内環境が健康であればあるほど、栄養吸収が効率的に行われ、筋肉回復や成長が促進されるため、筋肉増強には有利であることがわかりました。腸内環境を整えるためには、食物繊維やプロバイオティクスを含む食事を心がけることが重要ですが、トレーニングに取り組む選手が、まずは腸内改善を念頭にあげることはまずありません。また改善期間は、最低でも半年ほどはかかるといいますから、食事や、プロバイオティクスの摂取も、日頃から心がけておくことが大切なように思います。これにより、筋トレや体づくりを効果的にサポートできるでしょう。

出典

  • Clark and Mach. “The Crosstalk between the Gut Microbiota and Mitochondria during Exercise.” Frontiers in Physiology, 2016.
  • Jäger et al. “Probiotic supplementation promotes muscle recovery following resistance exercise.” American Journal of Clinical Nutrition, 2019.