若きアスリート育成の原則 vol.183

過去20年間、若いゴルファーたちの指導に携わってきました。プロになる夢を叶えたもの、叶わなかったもの、ツアー優勝を重ねたもの、この長い旅の中で、私が学んだことは、単にトレーニングやコンディショニング技術や管理を教えるだけではなく、選手たち一人一人の情熱や成長を大切にすることの重要性でした。

それぞれの選手が自分自身のペースで成長できるよう、常に支援と励ましの手を差し伸べてきました。365日お休みはないと言っても過言ではありません。しかしこの経験は、私にとっても学びの連続であり、選手たちの成長と共に自身も成長してきたことを強く実感しています。

昨今プロゴルフの世界も若年化が加速している中で、技術的にはトップクラスでも、人間的にはまだ子供のような選手が多く活躍しています。若いトップアスリートが感情をコントロールできず「言動が厳しかったり、報道に対して言葉が少なかったりする」現象は、スポーツ心理学や人間発達の観点から考察することができるようです。若い選手たちには特に、使い捨てではなく、「人の成長」として暖かく見守って欲しいという願いがあります。

何れ、アスリートが「成長した」、「丸くなった」と表現される時期も来るかもしれない。その理由を調べてみました。

 

経験による成熟

トップアスリートが経験を積むにつれて、競技以外の社会的なスキルや対人関係の扱い方においても成熟します。これにより、公の場での発言や行動がより慎重かつ寛容になることがあります。

プレッシャーの管理

ピーク時のアスリートは非常に高いプレッシャーの下で競技を行っています。このプレッシャーを経験し、それにどう対処するかを学んでいく過程で、自己制御やストレスマネジメントの技術が向上します。これが「丸くなる」と評される背景にあることが多いです。

価値観の変化

年齢とともに、多くのアスリートは自身の価値観や人生の優先順位に変化を経験します。若いころは競技成績に焦点を当てていたものが、家族や他の生活の面が重要になるにつれて、人間としての幅が広がることもあります。

自己認識の深化

多くのアスリートはキャリアを通じて、自己認識を深める機会を持ちます。これにより、自分の行動や言動が他人にどのように影響するかを理解し、より思慮深くなることがあります。

これらの変化は、アスリートだけでなく、どのような高圧的な環境で働く人々にも見られる一般的な人間の成長過程といえます。アスリートが「丸くなる」とは、彼らが人間として成熟し、多面的な人物に進化している証でもあります。このプロセスは、自己反省や他者との関係を通じて自然に進行することが多いようです。

経験に勝るものなし

若いアスリートに対する指導にあたっては、あわてて多くの指示を出すよりも、彼らが自身のペースで学び、成長できる環境を提供することが重要であり、周囲の言葉より経験に勝るものはないようです。

自己発見の機会を与える

若いアスリートが自分自身の強みや弱みを理解する機会を持つことは、長期的な成長に非常に有益です。彼らに自己評価の機会を与え、自分自身のパフォーマンスを振り返る時間を設けることが効果的です。

段階的な目標設定

一度に多くを求めすぎることなく、達成可能な短期目標を設定することで、アスリートは自信を持って次のステップに進むことができます。これにより、彼らは自らのペースで成長し、それぞれの段階で必要なスキルを習得できるようになります。

ポジティブなフィードバックとサポート

批判的なフィードバックよりも、ポジティブで建設的なフィードバックを提供することで、アスリートはより積極的に取り組む傾向があります。また、失敗から学ぶことの重要性を伝え、困難に直面したときに彼らを支えることが重要です。

個々の進歩を認識

各アスリートが持つ個性や能力に合わせた指導が必要です。一人ひとりの進捗に合わせて指導計画を調整することで、アスリートは自分自身の成長をより具体的に感じることができます。

このように、若いアスリートに対する指導では、彼らの自己成長を促すサポートを心がけることが、彼らが将来的に自己管理能力を養い、独立した優れたアスリートに成長するための鍵となります。

プロツアーは単なる競技の場を超えて、若い選手たちの成長と発展のための貴重な環境として機能しています。このステージは、技術的なスキルだけでなく、精神的な成熟や個人的な成長を促すプラットフォームとなっています。若い選手たちは、プロの舞台での経験を通じて、単にスコアを競う以上の価値を見出し、人間として、プロフェッショナルとしての資質を磨いていく場所でもあると思います。