日頃、SNSを通じてアスリートの試合結果報告を頻繁に目にしますが、ほとんど投稿しない選手・頻繁に投稿する選手・結果が良いときに投稿する選手が見られます。ファン視点で言えば、いい時も悪い時も共有してほしいと思うところもあるようですが、SNSで試合結果を公開する行動には、心理的な動機や影響が大きく関与しているようです。
好成績を共有タイプ
好成績のみを共有するアスリートは、自己の成功イメージを強化し、外部からの肯定的な反応を引き出すことを望んでいるかもしれません。これは自信を高め、公的な評価を維持する効果があります。
全部共有タイプ
一方で、良い時も悪い時も結果を公開するアスリートは、自身の経験を透明にすることで、よりリアルで共感を呼ぶ人物としてのブランドを築くことがあります。これにより、フォロワーとの強いつながりや、逆境に対処する強さを示すことができます。
しかし、SNSの使用は、精神健康に悪影響を及ぼすリスクも伴います。過度の使用は孤独感、比較によるストレス、自尊心の低下を引き起こすことがあります。特に、負の結果を共有した際にネガティブなフィードバックを受けると、これらの問題が顕著になる可能性があります(BMC Psychology)。
改善策としては、アスリート自身が自分のSNSの使用目的を明確にし、その影響を理解することが重要です。また、メンタルヘルスの専門家やコーチと連携して、SNSでの表現の仕方やそれに対する反応の処理方法を学ぶことが効果的です。SNSリテラシーを高める教育も、健全な使用を促すために役立ちます。
具体的な研究については、「Social Media and Mental Health: Benefits, Risks, and Opportunities for Research and Practice」(Naslund et al., 2020)やBMC Psychologyのレビューが、SNSの使用が精神健康に及ぼす正の影響と負の影響について包括的に議論しています。選手、コーチ、トレーナーは、これらの資料を参照することで、より深い洞察を得ることができるでしょう。私も調べながら学んでいるところです。
さて、試合結果がよくない場合、次への行動決断や心の切り替えについては、メンタルタフネスという言葉で表すことができそうですが、そのスピードは早ければ早いほどタフであるといえることが調べによりわかってきました。そこで身に覚えのある思考、状態思考と行動思考というワードが出てきました。
状態思考
例えば、ミスを長く思い悩む「状態志向」は、パフォーマンスにとって不利なことが示されず、負の連鎖を生むことがあります。忘れようとか切り替えようと働きかけるものの結果的に長期間思い悩んでしまう。
16パーソナリティーズ(MBTI型指標に基づく性格類型)の中で、長期間思い悩む傾向や状態思考になりやすいタイプはいくつかあります。特に以下のタイプが該当することが多いです。ちなみに、自分は違うだろうと思っていましたが、仲介者なのでもっとも状態思考向きでした(笑)
INFP(仲介者)
INFPは非常に理想主義的で感情豊かな性格で、自己と周囲の世界との調和を求めます。そのため、不完全さや個人的な価値と現実とのギャップに悩むことがよくあります。
INFJ(提唱者)
INFJも理想主義的で、非常に内省的です。深く物事を考え、未来に対するビジョンを持つ一方で、理想と現実の違いに苦しむことがあります。
INTP(論理学者)
INTPは非常に知的好奇心が強く、複雑な理論やアイデアに没頭しますが、過度の分析により決断を下すことが難しくなることがあります。
INTJ(戦略家)
INTJは非常に戦略的で計画的ですが、自分の目標や計画が完璧でない場合、長期間その問題にこだわることがあります。
行動思考
一方で、失敗をすぐに切り替える「行動志向」は、アスリートが高圧力下でも効率的に対処し、次の課題に集中するのに役立つとされています(BMC Psychology)。
ESTJ(管理者)
ESTJは組織的で実用的なアプローチを持ち、効率的に物事を進めることを重視します。リーダーシップが強く、計画を具体的な行動に移すことが得意です。
ESTP(起業家)
ESTPは非常に現実的で、実際の経験を通じて学ぶことを好みます。直感的に状況を読み取り、迅速に行動に移す能力があります。
ENTJ(指導者)
ENTJは強い目標意識と戦略的思考を持ち、計画を効率的かつ効果的に実行に移すことに優れています。非常に野心的で、目標達成に向けて積極的に動きます。
ESFJ(提供者)
ESFJは人々を支え、世話をすることを重要視しますが、具体的な行動を通じて他人を支援することに焦点を置いています。実際に行動することでコミュニティやチームの調和を促進します。
アスリートが試合結果を公開することに躊躇する場合、公開された結果がネガティブな自己認識を強化することを恐れるためかもしれません。このような心理的プレッシャーは、アスリートのメンタルヘルスにも影響を与え、ストレスや不安、自信の喪失につながる可能性があります(British Journal of Sports Medicine)。
改善策としては、心理的スキルトレーニングやマインドフルネスの導入が有効であると考えられます。これらのトレーニングは、感情のコントロールや注意の方向性を改善し、ネガティブな思考から素早く切り替える手助けをします。具体的には、失敗後に次の行動に焦点を合わせるプロセス目標の設定などが行動志向を強化する手法として推奨されています(BMC Psychology)。
これらの知見を踏まえ、アスリートが試合の結果に対するプレッシャーを管理し、心理的な健康を維持するためには、継続的なメンタルトレーニングと適切なサポートが不可欠です。コーチや心理学専門家がこれをサポートすることで、アスリートはより健康的でバランスの取れた方法で競技に臨むことが可能になるといえます。