バランスとパワーの源泉・ゴルフにおける下半身の役割 vol.181

おはようございます。

きょうは、先日知り合いのゴルフコーチから相談を受けた内容を共有させていただきます。
レッスンを行っている中で、体力がありそうな人とそうでなさそうな人のスイング学習に差があるように思うという話からでした。ゴルフ上達スピードの個々の違いは「体力(筋力や柔軟性)」だけではありませんが、重要な要素であることは変わらないと思います。

この体力を除いた原理原則に基づいたスイング指導をするのか、それともスクールの中で体力作りも一緒に進めていくのか、これはゴルフコーチの考え方や置かれているレッスン環境によるのではないかと思うところですが…。今回のゴルフコーチは、入会時にスクリーニングを行ったり、相談を受けた際にある程度自分でも見てあげたいという思いから、下記内容を共有(一部を公開)しました。

加齢に伴う筋力の低下は、主に下半身から始まることが多いとされています。この理由の一つは、日常生活で下半身が頻繁に使用されるにもかかわらず、特定の筋肉群が十分な刺激を受けずに徐々に衰えていくからです。また、下半身の筋肉は体を支えるために重要であり、その筋力が低下すると全体的な活動量の減少につながります。一日でも長くゴルフを楽しむ際には、下半身の筋力が必要なことは、多くの研究により証明されているところです。

また、下半身の筋力低下は、バランスの悪化や転倒のリスク増加と密接に関連しています。以下に、このテーマに関連する研究論文をいくつか紹介します

・”Age-related changes in muscle strength and mass in men and women. Observed over a 10-year period.” Janssen, I., et al. (2000). Journal of Gerontology. この研究では、10年間にわたって成人男女の筋力と筋肉量の変化を追跡調査し、特に下半身の筋力が顕著に減少することが報告されています。

・”Changes in muscle mass, muscle strength, and power but not physical function are related to testosterone levels in elderly men.” Fielding, R. A., et al. (2001). Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. この研究では、加齢に伴うテストステロンの減少が筋力特に下半身の筋力減少にどのように影響するかを評価しています。

・”Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis.” Cruz-Jentoft, A. J., et al. (2010). Age and Ageing. サルコペニア(高齢者の筋肉減少症)に関するこの論文では、特に下半身の筋肉量の減少が機能的な能力の低下にどのように影響するかについて説明しています。

これらの研究は、下半身の筋力が加齢とともにどのように変化するかを理解するのに役立ちます。筋力低下の予防や進行の遅延には、定期的な運動が重要であることが強調されています。そこで、回転に伴うバランスを維持するための下半身の役割をお伝えしながら、下半身の筋力評価を提案したのです。ゴルフパフォーマンス向上のための下半身の強度を評価するテストはいくつかあります。

垂直跳び(Vertical Jump Test)

このテストは下半身の爆発力を測定します。ゴルファーにとってスイング時に重要な力の発揮が求められるため、垂直跳びは有効な指標となります。

出典: Myers, J., Lephart, S., Tsai, Y. S., Sell, T., Smoliga, J., & Jolly, J. (2008). The role of upper torso and pelvis rotation in driving performance during the golf swing. Journal of Sports Sciences.

シングルレッグスクワット(Single Leg Squat)

このテストは一方の脚のみで行うスクワットで、バランスと下半身の筋力を同時に測定します。ゴルフでは片足の安定性が重要となるため、このテストは非常に役立ちます。

出典: Read, P. J., Lloyd, R. S., De Ste Croix, M., & Oliver, J. L. (2013). Relationships between field-based measures of strength and power and golf club head speed. Journal of Strength and Conditioning Research.

レッグプレス(Leg Press)

レッグプレスは下半身の筋力を測定するために広く用いられています。重量を調整して実施することで、個々の筋力レベルに合わせた評価が可能です。

出典: Fletcher, I. M., & Hartwell, M. (2004). Effect of an 8-week combined weights and plyometrics training program on golf drive performance. Journal of Strength and Conditioning Research.

3D運動解析(3D Motion Analysis)

この高度なテストは、ゴルフスイング中の体の動きを詳細に分析します。下半身の動きがスイングにどのように貢献しているかを科学的に解析できる施設も増えてきました。

出典: Egret, C. I., Vincent, O., Weber, J., Dujardin, F. H., & Chollet, D. (2003). Analysis of 3D kinematics concerning three different clubs in golf swing. International Journal of Sports Medicine.

これらのテストは、トレーニングプログラムの設計や改善のための出発点となります。具体的なトレーニング方法については、これらのテスト結果を基にパーソナライズされたプログラムを作成することが推奨したいところですが、スクール内で完璧を求めなくても生徒さんのゴルフライフが長く続くように考えられているゴルフコーチの行動がとても胸を熱くさせました。

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また、機器を使用せずに実施できるスクリーニングテストもいくつかあります。これらは簡単にどこでも実施できるため、トレーニングプログラムの初期評価や定期的なモニタリングに非常に便利です。以下にゴルフにおける下半身の強さと安定性を評価するためのいくつかのテストも紹介します。

ウォールシット(Wall Sit)

壁に背中をつけた状態で、膝が90度になるまで下半身を下げて、その姿勢をできるだけ長く保持します。このテストは、特に太ももの持久力と耐久性を測定します。

ステップアップテスト(Step-Up Test)

安定した台やステップを用いて、一定時間内に片足ずつ交互に台に上がり下りする運動を行います。このテストは、下半身の力と持久力を同時に評価します。

T-テスト(T-Test)

地面に「T」の形をテープでマーキングし、選手が速やかにそのパターンを前後左右に動きながら進むことで、敏捷性とバランスを評価します。

ランジウォーク(Lunge Walk)

一歩ごとに前に大きく踏み出し、前脚の膝を地面すれすれまで下げるランジを連続で行います。このテストは、前腿と後腿の筋力を評価します。

バランステスト(Balance Test)

片足立ちを行い、目を閉じてバランスを保持する時間を測定します。特にゴルフのスイングで重要な、片足の安定性とバランス能力をチェックします。

これらのテストは、特別な機器を必要とせず、どのトレーニング環境でも簡単に実施できるため、ゴルフプレイヤーが自身のフィジカルコンディションを把握し、向上させるのに役立ちます。それぞれのテスト結果に基づいて、必要なトレーニングエリアを特定し、個別のエクササイズプランを設計することが本来は推奨されます。