日本は努力を見せない美学かvol.52

アマチュアだからこそ、ウォームアップを入念に行う。


アマチュアだからこそ、プロゴルファーのように練習量もラウンドする頻度もそう多くはない。だからこそ入念に行うべきだが、どうもラウンド前に、やる気満々な姿を見せない美学があるようだ。

昔、酒を飲み朝まで麻雀をして、昼前にクラブハウスに入り毎週のように優勝される選手がいたという話を聞いたことがある。それがカッコいい時代もあったのだろう。しかし最近の選手からは、あまりそういう話は聞かない。お酒も控え、自分の枕を持ち歩き睡眠もしっかりとる。スポーツ科学が発展してきた背景もあるとは思うが、それでも日本とアメリカの形としての違いがありそうなので、今日はそんな話を書きます。

私が当時担当させていただいたシニアプロゴルファーの朝のウォームアップルーティンは、「準備の重要性」を象徴していました。何度も渡米し見てきた米国選手の姿と、自身の体調を安定させるために専門家という専門家に相談され、当時の形が出来上がったと話してくれました。「中身はそう大したことがない。でも毎日しっかり続けられるもの」。帯同中、朝のアップのお手伝いをすることは一切なく、メニューをこなすと顔を洗い、汗を拭いて、ユニフォームに着替える決まったルーティンでした。

アメリカと日本のゴルファーのアプローチには文化的な違いが見られることもありますが、どの国においても、充分な準備とウォームアップはパフォーマンス向上に不可欠であり、特にシニアのカテゴリーでは、体のケアと準備はさらに重要な意味を持ちます。

ウォームアップの重要性

ウォームアップは、体を動かす準備をするだけでなく、心を試合モードに切り替えるプロセスでもあります。シニアプロゴルファーが毎朝続けるルーティンは、体の柔軟性を高め、筋肉を温めることで怪我のリスクを減らすと同時に、精神的な集中力を高める役割を果たします。

シニアプロゴルファーのルーティン

ルーティンが特別なのは、そのシンプルさと実行のしやすさにあります。
具体的には、以下のようなメニューでした。

  • ストレッチ:
    ゴローンと床に仰向けに寝て、全身の筋肉をゆっくりと伸ばし、柔軟性と可動域を高めます。特に、ゴルフに必要な背中、肩、腰、脚の筋肉に焦点を当てていました。足の指先も触りほぐしています。徐々に立ち上がり立位で次のメニューに。
  • 軽いカーディオ: 室内でできる程度のステップ運動を何種類か行います。心拍数を少し上げ、体を温めます。必ず汗をかいていました。
    洗顔し、汗を拭いたらユニフォームに着替えクラブハウスを出ます。この時の状態がいつも同じように心がけられていたようです。
    プロアマの日でも試合と同じように準備をされていました。
  • スイング練習: スイングの基本動作を軽いクラブで行い、筋肉の記憶を呼び覚ます。
  • パッティング練習: パット練習で感覚を研ぎ澄ませます。距離感と方向性の確認を行います。

文化的違いとアプローチの多様性

日本において「練習せずにいいスコアを出す」ことが格好良いとされる場合もありますが、これは「努力を見せない美学」に基づく文化的な価値観の表れかもしれません。実際、クラブハウスに来て一切ストレッチもしないでスタートすると言われていた選手でも、まだ外が暗い早朝に、走り込んでいる姿を何度も見たことがあります。一方で、アメリカのスポーツ文化では、準備とウォームアップの重要性がより強調される傾向にあります。小さなホテルにもフィットネスルームがついていることが多く、コースに入る前に準備を整えている選手を多く見かけます。しかし、どちらの文化においても、最終的には個々の選手が自分にとって最適な準備方法を見つけ、実行することが成功への鍵となります。

シニアプロゴルファーのように、自分に合ったルーティンを厳選し、淡々と続けることができる習慣は、年齢に関係なく、すべてのゴルファーにとって価値ある取り組みです。毎日の小さな努力が、長期的な成功と健康を支える基盤となるのは、担当させていただいた選手の優勝回数が物語っていると思います。